夜中に激痛で目が覚める|電気性眼炎の正体と対処
夕方まで何ともなかったのに、夜中の2時、目に砂を詰め込まれたような激痛で飛び起きる——溶接を始めた人の多くが一度は経験するのが電気性眼炎(いわゆるアーク眼・溶接焼け)です。「その時は平気だったのに数時間後に激痛」という時間差が最大の特徴で、初めての人ほど何が起きたか分からず不安になります。仕組みと応急対応、受診の目安、そして「いつまで痛いのか」「目薬は使っていいのか」といった夜中に検索したくなる疑問まで、順に整理します。
どういう症状か
- アーク光の強い紫外線で角膜の表面が傷つくことで起こります
- 受光から数時間後(多くは6〜12時間後)に症状が出るのが特徴。だから「夜中に目が覚める」
- 激しい痛み、砂が入ったような異物感、涙が止まらない、まぶしくて目を開けられない
直接溶接していなくても、近くの作業を横から見ただけで起こります。周囲の人も遮光カーテンで守る必要があるのはこのためです。
症状の正体が分かったところで、実際に痛くなったときに何をすべきか(何をしてはいけないか)を確認します。
痛くなったときの対処
- 目をこすらない。傷が広がります
- 清潔なタオルで冷やすと楽になることがあります
- 暗い部屋で目を休める。コンタクトは外す
- 痛みが強い・翌日も続く・視界の異常があるときは眼科を受診してください。自己判断で市販薬を続けるより、診てもらうのが確実です
多くは1〜2日で回復しますが、繰り返すのは目に良くありません。症状が出た=防護が足りていないというサインとして受け取ってください。
対処の次に気になるのは「この痛みはいつまで続くのか」。回復の目安を知っておくと、夜中でも落ち着いて対応できます。
目の痛みはいつまで続く?いつ治る?
電気性眼炎の痛みは、多くの場合24〜48時間程度で軽快していきます。角膜の表面の細胞は再生が早く、傷が浅ければ1〜2日で修復されるためです。一般的な経過の目安を表にしておきます。
| 時間経過 | 典型的な状態 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 受光直後〜数時間 | ほぼ無症状 | 心当たりがあれば早めに就寝準備 |
| 6〜12時間後 | 激痛・流涙・異物感のピーク | こすらず冷やして安静 |
| 24〜48時間後 | 痛みが徐々に引く | 軽快しなければ眼科へ |
| 2〜3日後 | ほぼ回復 | 痛み・かすみが残るなら必ず受診 |
ただしこれはあくまで一般的な経過です。丸2日たっても痛みが引かない、視界がかすむ・欠ける、光を見るだけで激痛が走る状態が続く——こうした場合は角膜の傷が深いか別の要因の可能性があるため、経過観察をやめて眼科を受診してください。診断と治療の判断は必ず医師に委ねるのが原則です。
市販の目薬は使ってもいい?
応急的に市販の人工涙液タイプ(防腐剤無添加のもの)で目の乾きを和らげること自体は一般的な対応として知られていますが、「市販薬でしのぎ続ける」ことはおすすめできません。理由は2つあります。
- 角膜に傷がついた状態は細菌感染のリスクがある状態です。感染予防や傷の回復に適した点眼薬は、眼科で処方されるものと市販品では役割が異なります
- 「痛みが引いた=治った」とは限りません。自己判断で市販薬を続けて受診が遅れると、傷が深かった場合に回復が長引くことがあります
また、血管収縮剤入りの「充血がすぐ取れる」タイプの目薬で症状を隠すのは避けたほうがよいとされています。充血は目が修復のために血流を増やしているサインでもあるからです。コンタクトレンズの人は、症状が治まるまで装用を中止し、再開時期は眼科の指示に従ってください。夜間で受診できないときの過ごし方は、前述のとおり「こすらない・冷やす・暗くして休む」が基本です。
痛くて眠れない夜はどう過ごせばいい?
電気性眼炎の厄介なところは、症状のピークが深夜に来ることです。眼科が開いていない時間帯にできるのは、「悪化させない」ことに徹することです。
- 絶対にこすらない:無意識に手が伸びるので、どうしても触ってしまう人は軍手をして寝る、という現場の知恵もあるほどです
- 清潔な冷たいタオルをまぶたの上に:血管が落ち着き、痛みがいくらか和らぐことがあります。氷を直接当てるのは冷えすぎるので避けます
- 部屋を暗くする:光刺激そのものが痛みになるため、スマホの画面を見続けるのも避けたほうが楽です
- 目を動かさない:眼球が動くとまぶたと傷がこすれます。両目を閉じて、できれば眠ってしまうのが一番の薬です
そして朝になっても痛みが強い場合は、我慢せず眼科へ。仕事を休む後ろめたさより、目の回復を優先してください。多くの場合、受診して適切な処置を受けたほうが結果的に復帰も早くなります。
ここまでは「なってしまった後」の話でした。もう一つ、よく聞かれる不安にも答えておきます。
溶接で失明する可能性はある?
電気性眼炎そのものは角膜表面の一時的な傷であり、適切に対処すれば通常は回復します。一度のアーク眼で直ちに失明する、という性質のものではありません。ただし「だから安心」ではなく、注意すべきは繰り返しと長期の曝露です。
- 急性(電気性眼炎):紫外線による角膜のやけど。痛いが多くは数日で回復
- 慢性の影響:防護不十分なまま強い光を浴び続けると、水晶体や網膜への負担が蓄積するとされ、白内障などのリスク要因になることが指摘されています
つまり、電気性眼炎は「今回は治るが、防護が破られたことを知らせる警報」です。何度も繰り返している人は、遮光度の選定・面の使い方・周囲からの反射光対策のどこかに穴があります。目の健康は溶接工の商売道具そのものなので、症状が出るたびに防護を見直す習慣をつけてください。ここからは、その予防の具体策です。
予防が全て
- 適切な遮光度の溶接面を使う。「ちょっとだけだから」でお面を外さない
- 遮光カーテン・ついたてで周囲の人を守る。自分が被害者にも加害者にもなります
- 自動遮光面は電池切れで遮光しなくなることがあります。作業前にテスト
- 反射光にも注意。ステンレスや白い壁の反射でも起こり得ます
なお、これらの防護の知識は自己流で覚えるものではなく、資格講習で体系的に教わる内容です。
講習で必ず教わること
対応する教習機関
メーカー系キャタピラー教習所 北海道教習センター
アーク溶接特別教育とガス溶接技能講習の両方を開催。フルハーネス型墜落制止用器具特別教育・職長安全衛生責任者教育も実施。外国語による講習を多数開催。
メーカー系コベルコ教習所 北海道教習センター
アーク溶接等特別教育は21時間(学科11時間+実技10時間)・受講資格の制限なし。ガス溶接技能講習は13時間(Vコース)、ベトナム語対応のV3コースは17時間。移動式クレーン・車両系以外の技能講習の実技を屋内で実施。
メーカー系コマツ教習所 北海道センタ
アーク溶接等の業務に係る特別教育は3日間・受講料32,000円(テキスト代込)。ガス溶接技能講習は2日間・受講料26,000円(テキスト代込)。受講要件は特になし。